講師の高木です。
このコラムではスピーチを控えた皆様や
人前で話す皆様向けの記事を掲載しています。
今回のテーマは「気持ちの立て直し」です
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スピーチ、プレゼン、発表の際にミスはつきものです。
言い違い、思い違い、とちり、アクセントのミス、
時間配分ミス、場の盛り上げ方のミス…
スピーチや発表では多種多様なミスが起こります。
私は前勤務先のラジオ局アナ歴が18年半、
独立後のフリーアナ歴が5年以上と、
中堅あるいはベテランの域に入っています。
ですがアナウンスの仕事の上でのミスは無数に経験し、
心が折れるようなことも何度も何度もありました。
ミスをした際によく言われるのがこんな言葉。
「ささいなミスを気にしても仕方ない」
「ミスをしたら取り返せばいいじゃないか」
「ミスをした分、人は強くなるはず」
確かにその通りですよね。
ミス直後はこんな言葉が心に染み入るものです。
こうした言葉が効果的な場面も多々ありますし、
私も大いに活用すべきと考えます。
でもこうした言葉を
「なぐさめ」「よくある訓示」「一般論」
などと感じてしまうお気持ちもあるはずです。
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心の中では様々な気持ちが出ては消えるもの。
スピーチや発表などのミスから早く立ち直るには
どうすればよいのでしょうか?
私の放送現場経験からヒントを一つご提示させていただきます。
それは「定時で声を出す」ということです。
大事なスピーチや発表の前後で
「次以降の声出しタイムをあらかじめ決めておく」
とスケジュールを組むことなのです。
これは私のニュースアナ経験に基づく行動重視の回復プランです。
「時間通りの複数回の声出しで、折れた心の自力回復へ」
という回復策のご提案です。
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私はラジオ局のアナウンサー時代、ニュース担当日には
1日5-6回程度の定時ニュースを担当していました。
これは1-2時間程度の間隔でニュースを読む仕事です。
ニュースはリアルタイムで内容が変化します。
現場では放送直前にニュースの内容が変わることもしばしば。
「初見」(しょけん=下読みなしの状態)に近い状態で
ニュース原稿を読むケースも決して珍しくありません。
初見の状況ではとちりなどのミスは生じやすいのですが、
周囲はプロとしての仕事の成果を求めています。
アナウンサーのミスはそのまま
「視聴者やリスナーに届くミス」となるので、
必死になってニュースを読み上げるしかありません。
アナウンサーとしてミスをした後は気分が大きく乱れます。
「とちった言葉が、各地に届いてしまった…」と辛く思う時もあれば、
「あんなに準備をしたのに!」と悔しく思うこともあります。
ですが1時間後には次のニュースの本番の時間。
たとえ気分が下がっても、心的な動揺が続いていても
プロとして平静を装う必要があるのです。
私の場合、ニュースとニュースの間の時間帯は、
ミス後の乱れた心を整える調整時間として使っていました。
・反省すべくところは反省
・全体の仕事の流れを確認
・次のニュース原稿を読む準備へ…
などと休む間もないまま、次の準備をしていたのです。
当然のことですが、次のニュースの時間は私の心の
コンディションとお構いなしにやってきます。
私の心の回復度合いが万全でも、不十分であっても、
「次の定時ニュースでマイクの前へ」
というのは、動かせない決まり事だったのです。
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非常にきつく感じることもあるニュースアナのタイムスケジュール。
ですが、今思うと
「決まった時間に声を出す」
というこの動きは「心的回復策」としても非常にすぐれ、
「スキルアップ」の面でもかなり効果があったと感じています。
なぜかというと…
・時間的制限 = 「心を乱せる時間」すら決定済み
・心的回復の必要性 = 声のトーンの乱れはプロ失格
・自力回復の可能性 = 次の機会でミスを取り返せる可能性
など、複合的な要素があったからです。
私自身の経験ですが、ニュースの読みでミスをした後に、
次の1時間後のニュースを淡々と読み終えた後は
「心がへこんでいたけれど、何とかできた…」
「思ったよりもうまくできたかもしれない…。」
「先程のミスを少しは取り返せたかも…」
などと、一種の達成感と、自分なりの手ごたえ、
そして「心的コンディションの回復」を実感できました。
個人的な感想ですが、
「声を出す、それも決まった時間にしっかり話す」
という行為自体が、「リセットボタン」となり、
頭の中のマイナス思考の連鎖を止めたのだと思います。
そう考えると、
「声を出す時間を定時化する」いうことは、
「気持ちの立て直し」の「保険」とも言えるかもしれません。
「落ち込んでも、また次」という流れになるからです。
「定時に声に出す」というニュースアナの一連の流れ、
ぜひ皆様のスピーチや発表の場面でもヒントになさってください。
この「気持ちの立て直し」については、次のコラムでも紹介します。
皆様のご参考になれば幸いです。
(講師:高木圭二郎)
この記事の続きはこちら
【スピーチコラム】スピーチのミス… 気持ちを立て直す「定時の声出し」(2)
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この記事を書いた人
高木 圭二郎(たかぎ けいじろう)
研修講師・フリーアナウンサー トークレスキューNEXT代表
(元 茨城放送アナウンサー兼 ディレクター・報道記者)
講師プロフィール詳細はこちら
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講師活動の実施実績はこちら。
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