講師の高木です。
このコラムではスピーチを控えた皆様や
人前で話す皆様向けの記事を掲載しています。

きょうのテーマは「急なスピーチの対処法」。

会合や懇親会等で、マイクが自分のところに回ってきて

「急にひとこと話すことになった…」

というご経験はないでしょうか?

「何を話そうか…」と戸惑う中で、思い付くままに話し、
「話すには話したけれど、うまくいかなかった…」
というパターンも多いようですね。

急なスピーチは皆様が思う以上に難易度が高いのです。
今回は、その理由と対処法を説明します。

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「急なスピーチ」が難しい理由。

それは「言語化」と「音声化」の準備が不十分になるからです。

詳しく説明しましょう。

私たちは言葉を発するとき、

「思考→言語化→音声化」 の流れを瞬時に行っています。

頭に思い浮かんだ「思考」を、話す言葉にして(言語化)
それを声に出して(声のトーンも考慮して)「音声化」しています。

「急なスピーチ」は、この「思考→言語化→音声化」の流れで、
特に「言語化」の要素を混乱させてしまうのです。

話す内容が混乱したまま、ただ話す、というのは、
どうしても浅薄な内容になってしまうわけです。

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人前のスピーチは、メッセージ性が求められます。

多くの聴衆や大事な人がいる場面で、
聞き手の皆様の貴重な時間を割いて話すのですから、
「心に残るようなメッセージを発するべき」と、私は考えます。

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そこで「急なスピーチ」の対処法です。

それは、たとえ時間がなくても、周囲に急かされても

「(話す項目を)書いて、つぶやく」

というアクションを加えることです。

これを実践するだけで、驚くほど大きな差がでます。

箇条書きのメモを書いて、小さな声でつぶやくだけでも
スピーチの際に大きな差が出るのです。

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私の体験談をお伝えしましょう。

私はラジオ局のアナウンサーでしたが、
実はフリートークが大の苦手でした。

本番前に新聞などで情報を集めるは得意でしたが、
いざ本番のフリートークとなると、話がまとまらず、
緊張も重なり、不出来なフリートークで終わる、
ということが何度も何度もあったのです。

「原稿なしのぶっつけ本番」の感じは、
私には全くフィットしませんでした。

一方で私はニュース原稿を読むのは得意でした。

書かれた文字を丁寧に読み上げることは
私のアナウンスのスタイルに合っていたのです。

そこで私は、生放送の前、ある対策を取りました。それは

「たった1分のあいさつや、少しのフリートークでも、
 話す内容をメモ書きをして、手元に置く」

という作業でした。

これは明らかな効果がありました。

「書かれていないことを話す」という不安が
「メモを読めば良い」という安心感に変わったのです。

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ですが、この対応策は、放送現場では不評でした。

「アナウンサーたるもの、
 フリートークでメモを読んではいけない」

という不文律があったからです。

「プロならば、メモ無しで話せることは当然」

という場の空気もありました。

私は迷いました。

「メモを見ずに自由自在に話せれば、格好がつく…」
「原稿を見ないことで、トラブル対応の力もつく…」

そんな考えが交錯する中、私は熟慮の末、

「自分の力を最大化することが重要」
「不格好でもメモを書いて、事前に声を出すべき」

と判断しました。

「たった1分の挨拶でもなりふり構わずメモを書く」
「そのメモを一度声に出して、フリートーク調で読む」

というスタイルを選択したのです。
この方針を固めたのは40代に入ってからでした。

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私はこの手法を放送現場以外でも活用しました。

研修会や会合などで

「発言チャンスがありそうだな…」

という時には、話す項目を手元のメモの余白に
こっそり「書き出して」、一度「つぶやく」
という流れを重ねたのです。

その結果どうなったか?

会議などの発言の場で、相乗効果が生じたのです。

書いた発言内容を一度つぶやいてから発言するので、

「発言が的確ですね」

などの評価も多数いただくようになりました。

私には 「一度書いて、つぶやく(声に出す)」
とのスタイルが欠かせない、と再認識できたのです。

この「書いて、つぶやく」というアクションは、
「言語化」と「音声化」の過程の確認作業であり、

その過程の中で、話す内容の整理=「言葉の編集」と
声のトーンの確認=「音声表現」の確認にもなったのです。

この手法は、私のスピーチ時の心の支えとなりました。

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皆様へのご提案です。

たった30秒の挨拶やスピーチでも、不安を感じたら、
どうぞためらわずに「書く」という作業を行って下さい。

話す言葉を文字にすることで、
思考の整理や編集の効果があります。

そして書いた言葉を
「声に出す」というアクションを重ねましょう。

声を出しづらい場なら、小声のつぶやきでも大丈夫。
つぶやきも「音声表現」のリハーサルなのです。

「書くこと+声に出すこと」の反復練習は
人前の話の苦手意識を減らすはずです。

急なスピーチの際こそ安心材料を作るつもりで、
「書いて、声に出す」という流れを意識してくださいね。

この講座では、一生懸命な皆様を心から応援しています。
皆様のご参考になれば幸いです。

(講師:高木圭二郎)

この記事を書いた人

高木 圭二郎(たかぎ けいじろう) 

研修講師・フリーアナウンサー トークレスキューNEXT代表
(元 茨城放送アナウンサー兼 ディレクター・報道記者)

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