講師の高木です。
元ラジオ局アナ・報道記者の経験から、全国各地の自治体・公的機関で
「危機管理・マスコミ対応研修」や「説明力向上研修」などを行っています。

今回のテーマはこちら。
「記者会見 報道記者の予期せぬ質問にどう対処する?」

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今回は緊急記者会見に関する質問に答えたく思います。

Q:記者会見で報道記者から予期せぬ質問が来た場合、どう対処すれば良いでしょうか?

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このクイズの回答の前に、すこし基礎講義をさせて下さい。

■基礎講義① 記者会見の前に想定問答を作りましょう。

緊急記者会見に至るパターンは様々です。

公金横領、職員逮捕、飲酒運転、個人情報漏洩など、不祥事のパターンも多数。
災害、事故、トラブル等での緊急記者会見も考えられます。

緊急記者会見時の報道陣の質問は、多岐にわたります。
報道記者は、プレスリリースや配布資料を手にしても、「書かれていない情報」を探る人々。
報道陣は「書面に書かれていないけれど、大事な情報が無いか」ということを常に意識しながら
記者会見での質疑応答を行います。

このような緊急記者会見を開く際の大原則として、
マスコミ対応や緊急記者会見は「準備して臨むもの」という点が挙げられます。

事実説明、危険性・継続性、原因、責任、防止策(未然防止・再発防止)等に関する質問など、
報道陣の質問にはいくつかのパターンがあります。
そのような想定質問を先に作り、「ここは聞かれるな」という点をリストアップして、
事前に「想定問答(想定Q&A)」を作成しておくのが重要です。

事案によりますが、「想定問答(想定Q&A)」は10~20項目程度は用意して、
そこから枝葉の質問も想定。さらに補足資料も用意して緊急記者会見に臨む、
というのがオーソドックスな手法です。

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■基礎講義② 記者会見の前に、会見リハーサルを行いましょう。

想定問答(想定Q&A)が出来上がったら、ぜひ「会見リハーサル」も行ってください。

緊急記者会見の前は、不祥事・トラブル・事故・災害等の対応で現場が混乱し、
時間的余裕も無い状況です。

それでも必ず会見リハーサルを行うことを推奨します。
記者会見で、いきなり報道陣の前で対応するのでなく、会見コメントに目を通し、
何度も声に出して練習する、というのが重要です。

この会見リハーサルによって、報道陣から何が聞かれ、会見者として何を述べるべきか、
ある程度、道筋が見えてきて、リハーサルの間に、「予期せぬ質問」に気づくこともあります。

つまり、入念な準備により「予期せぬ質問」を事前に減らすことが出来るわけです。

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では今回のクイズに戻りましょう。

Q:記者会見で報道記者から予期せぬ質問が来た場合、どう対処すれば良いでしょうか?

この対処法は、実は高等テクニックを要する部分です。

報道陣は、会見者側が想定していない質問も細部にわたって聞いてきます。
特に発生した事実詳細については、5W1Hの視点で多岐にわたる質問が出てきます。
会見時の些細な情報が、大きなニュースにつながる可能性もあるからです。

そのような会見の中で、返答に詰まった場合、どうするか?
今回は2つの回答を示したいと思います。

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A1:コメントの差し控え+状況説明

プライバシーにかかわる問題や、捜査線上の問題は返答しづらいケースがあります。

そうした場合は、

・「その件につきましては、担当部局内で再度確認後、
  記者クラブ幹事社様を通じてご回答申し上げます。」

・「その件につきましては、捜査上の影響が想定されますことから、
  ここでの回答は控えさせていただきますことをご理解ください。」

・「その件につきましては、プライバシーへの懸念がありますことから、
 ここでの回答は控えさせていただきますことご了承ください。」

などと、「コメントは差し控える」という言い回し+状況説明で対応するのが一つの手法です。
これならば「完全な回答拒否」にはならず、現時点での回答をしている、ということになるわけです。

ただこのような「コメントの差し控え」はやはり、記者会見時の印象が悪くなるもの。
報道陣から、「何のための記者会見か?」との不平不満やクレームが生じることが考えられます。

そこで、もう一つの回答事例も示したいと思います。

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A2:キーメッセージの繰り返し

報道陣の予期せぬ質問が来ても、

「キーメッセージ(重要メッセージ)を繰り返す」
「何度でも丁寧に、キーメッセージを繰り返す」

という手法が有効です。

キーメッセージの代表的な項目は、「事実説明」「謝罪」「再発防止」など

例えば、「再発防止に努める」という至極当然のことを、謝罪と共に再度伝えても良いわけです。
次のコメントのようなキーメッセージの繰り返しで報道対応をする、というのも一つの手法といえます。

【キーメッセージを使ったコメント一例】

事実説明「現時点で原因は究明中ですが、○○という事実が確認できています。」

謝罪  「関係者の皆様方にご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。」

再発防止「この件につきましては、再発防止に努めるとともに、職員への指導を徹底します。」

いかがでしょうか。
「回答不可」「本当はノーコメントと言いたい」との状況でも、
このようなコメントならば、報道陣や視聴者等への誠意は、ある程度伝わるかと思われます。

その上で補足説明できる部分は補足、との姿勢を示せば、報道陣の矢のような質問を受けても
パニックにならずに済むはずです。

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さらに注意点を一つ加えます。

■注意点 憶測の発言は絶対にしない。

言うまでもなく、記者会見の場で「憶測の発言」は絶対にしてはいけません。
憶測の発言は根拠のない個人的な思い込み。

記者会見時の「憶測の発言」はエラー要素となり、ネット炎上等にも発展します。
根拠のない情報を憶測で言うよりは、上記のようなキーメッセージを
何度も繰り返す方がはるかに良いわけです。

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まとめです。

報道記者からの予期せぬ質問で返答に詰まったときは、

・「コメントは差し控える」という対応も一つの手法。ただし多用は禁物。
・キーメッセージ(事実説明・謝罪・再発防止)を丁寧に繰り返す。
・憶測の発言は絶対にしない。

などの対応が有効です。

今回は緊急記者会見に臨むトップや幹部の皆様、組織の広報担当の皆様に
特に知ってほしい内容でした。

今回も長文となりましたが、皆様のご参考になれば幸いです。
(講師:高木圭二郎)


この記事を書いた人

高木 圭二郎(たかぎ けいじろう) 

研修講師・フリーアナウンサー トークレスキューNEXT代表
(元 茨城放送アナウンサー兼 ディレクター・報道記者)

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