講師の高木です。元ラジオ局アナ・報道記者の経験から、
全国各地の自治体・公的機関で「危機管理・マスコミ対応研修」を行っています。

今回のテーマはこちら。
「緊急記者会見 少しの笑顔も動画配信+炎上の時代です」(画像はイメージです)

私の「危機管理・マスコミ対応研修」では、台本活用型の模擬記者会見をよく実施します。
その模擬記者会見の際、私はこのようなポイント指導をしています。

「有事の際、報道陣の前ではエラー要素を絶対に見せないでください!」

「被害者も出ている想定です。少しの笑顔もエラー要素とお考え下さい!」

といった説明です。

「人間だから表情の緩みや少しの笑顔は仕方がない」などと思わないでください。

緊急記者会見の現場では、そうした気の緩みからくる「少しの笑顔」で
ネット炎上や多数の批評・批判が生じることもあるのです。

一つ事例を紹介しましょう。

今年(2024年)3月の神戸大学の副学長の記者会見の事例です。

事案と会見の概要は次のようなものでした。

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神戸大サークル破壊行為・謝罪会見(2024年3月)

■事案

・神戸大学・非公認サークル「バドミントン同好会・バドボーイズ」の学生らが、
 3月10日からの春合宿中、宿泊先の富山県内の旅館で、障子を破る、胴上げで天井を破る、
 灰皿を倒し破損する、等の行為を行う。

・この事案は、SNS上の動画・画像掲載で発覚。

■会見

・2024年3月25日、神戸大学は記者会見を実施。

・教育担当理事の副学長らが謝罪するとともに、経緯を説明。
・副学長らは宿泊施設に出向き謝罪。学生に注意喚起。

■動画

・会見は、関西の放送局などが中継。動画はYoutubeでノーカット公開。
・副学長の表情は、謝罪会見時に笑っているように見え、この点も批判を浴びた。

■関連リンク

【神戸大学が迷惑行為を認め謝罪】
天井に穴・過去には花瓶にタバスコ…サークル不適切行為 「厳重に処分」〈カンテレNEWS〉

https://www.youtube.com/watch?v=Yqofs6hrGfE

【速報】旅館で“迷惑行為”神戸大学が会見 春合宿で障子や天井を破壊 日テレNEWS
https://www.youtube.com/watch?v=3hOXJcjaFrs

(※紹介動画はリンク切れの場合があります。ご了承下さい)

―――――――――――――――――――――――――

この問題は様々なメディアが大きく取り上げ、視聴者らは厳しい批判の声を上げました。

そして注目すべきは、緊急記者会見の動画配信が行われ、約半年が経過した日時
(=この記事を執筆した2024年9月12日時点)でも会見動画が丸ごとノーカットで
閲覧できる状況にあることです。

批判の声は、Youtubeのコメント欄などにも多数掲載されました。

問題行動を起こした学生への批判が圧倒的に多いのですが、
会見に臨んだ副学長の表情を批判する声も多数出たのです。

この副学長に対しては、ニヤニヤしている、笑っている、などと
厳しい声が寄せられ、学校側の体質を批判する声も寄せられました。

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ここからは私の見解です。

諸事情があるにせよやはり緊急記者会見の場は、いつも以上に真摯な姿勢が求められる環境です。

なぜならば、被害者や利害関係者に対しまずはきちんと謝罪し、事実説明や再発防止策など
キーメッセージを丁寧に説明すべき場であるからです。

会見者自身が微笑む体質の方であれば、それは周囲の広報担当者らが、

「会見の場で、微笑みは封印してください!」

などと徹底指導をすべきかと思われます。

事実としてこの神戸大学の緊急記者会見では、会見後の批判や若干のネット炎上が生じました。
そしてデジタルタトゥー(ネット上のネガティブ情報の残存)とも言える現象が生じています。

よって緊急記者会見としては、合格点を出せない、と言わざるを得ません。

そのようなネット上の批評・批判、デジタルタトゥー化を回避するには、
危機管理広報の体制確認や、緊急記者会見の徹底した事前準備が必要で
特に緊急記者会見のリハーサルを入念に行うべきかと、私は考えます。

厳しいコメントの様ですが、これは被害にあわれた方のお気持ちなどを考えれば
当然守るべきポイントと言えます。

ということで、今回のまとめです。

「緊急記者会見の場では絶対にエラー要素を見せない。」

「少しの微笑みすらもエラー要素と考える。」

以上、皆様のご参考になれば幸いです。
(講師:高木圭二郎)


この記事を書いた人

高木 圭二郎(たかぎ けいじろう) 

研修講師・フリーアナウンサー トークレスキューNEXT代表
(元 茨城放送アナウンサー兼 ディレクター・報道記者)

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講師活動の実施実績はこちら。
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