講師の高木です。元ラジオ局アナ・報道記者の経験から、
全国各地の自治体・公的機関で「危機管理・マスコミ対応研修」を行っています。

今回のテーマは「クライシス・コミュニケーション」(画像はイメージです。)

不祥事・トラブル・事故などが起きた際の「緊急記者会見」などは
専門用語で「クライシス・コミュニケーション」にくくられます。

「クライシス・コミュニケーション」?

何だか難しい言葉ですね。

この「クライシス・コミュニケーション」という用語は
「リスク・コミュニケーション」とのセットで使われることが多い用語。
あらためて用語解説をしましょう。

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■リスク・コミュニケーション
リスクに関する正しい情報を平時から共有し、意見交換などを通じ、相互理解を図ること。
情報発信、パブリックコメント等も含む。 

■クライシス・コミュニケ―ション
緊急時、危機的状況のコミュニケーション活動。「危機管理広報」とほぼ同義。
報道機関、WEB、各種メディアへの情報公開でダメージ最小化、外部理解、
行動変容、協力促進などを図る広報活動。

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この用語解説では、ピンとこない皆様も多いと思います。
そこで「化学物質を扱う工場」で考えると分かりやすいと思います。

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【事例】:化学物質を扱う工場での用語の使い分け
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■リスク・コミュニケーション事例
事業者による地域住民や利害関係者に対する日頃からの丁寧な説明。
ホームページ等での情報発信、住民との対話などの活動。

(コメント例)
「弊社ではこのような化学物質を扱って事業を行っています」等の説明や対話など。


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■クライシス・コミュニケーション事例
事故や災害等で、その化学物質が外部に出た場合などの有事の際の情報公開。
緊急記者会見、WEBでの情報公開などで、状況説明や今後の安全対策等を説明。

(コメント例)
「〇月〇日○時〇分 大地震による振動で化学物質の外部流出が発生しました」
「この外部流出による健康への被害は無いものと考えられます」等の説明など。

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この「リスク・コミュニケーション」と「クライシス・コミュニケーション」は、
両方とも大切。平時から丁寧な説明を行い、有事の際の説明も迅速に行う。
自治体や企業・組織・団体等の広報担当の皆様には、この両方を意識していただきたいのです。

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話を戻しましょう。
「緊急記者会見」は「クライシス・コミュニケーション」の一種とお伝えしました。
不祥事・トラブル・事故等が起きた後の「緊急時、危機的状況のコミュニケーション活動」
になるわけです。

この「クライシス・コミュニケーション」で意識すべきポイントは「ダメージの最小化」。

この「ダメージの最小化」を意識せず、形式的な緊急記者会見(謝罪会見)を行うケースが
このところ時々見られるようです。

最近の事例で私が気になったのは、やはり2023年7月のビッグモーター社の緊急記者会見でした。

(参考)
ビッグモーター兼重社長の記者会見に「責任逃れ」…謝罪一転、独自の「経営哲学」を展開
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230725-OYT1T50274/3/
(紹介記事はリンク切れの場合があります。ご了承下さい)

この記事で出てくる視聴者の声と同様、「責任逃れの印象」を感じた方も多かったと思われます。
この件に関しては、様々な専門家が見解を示していますが、やはり有事の際の謝罪会見としては
否定的な見解が多いように思われます。

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不祥事・トラブル・事故などの際には、信用失墜、批評・批判、クレーム、ネット炎上等の
「組織へのダメージ」が確実に生じます。

緊急記者会見(謝罪会見)では、事実を一つずつ丁寧に説明し、報道陣との質疑応答に対応し、
非があれば顧客や地域住民、利害関係者らへしっかり謝罪する必要もあるわけです。

ここでもし「自分たちは悪くない」「悪いのは○○だ」「自分たちこそ被害者だ」などと
開き直りをしてしまうと、会見を見ていた人たちは「反省の色が無い」などど反応し、
「ダメージの最小化」どころか、二次的なネガティブ感情を抱くわけです。

これらの点を踏まえて今回のまとめです。

・緊急記者会見は「クライシス・コミュニケーション」の一種。
・「クライシス・コミュニケーション」は「ダメージの最小化」が目的。
・非があれば謝罪を丁寧に行い、信用失墜を食い止める姿勢が大切。

「火に油」とならぬよう組織トップの皆様や広報担当の皆様には、
これらの点を再確認してほしい、と思います。

以上、皆様のご参考になれば幸いです。
(講師:高木圭二郎)


この記事を書いた人

高木 圭二郎(たかぎ けいじろう) 

研修講師・フリーアナウンサー トークレスキューNEXT代表
(元 茨城放送アナウンサー兼 ディレクター・報道記者)

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