スピーチ講座トークレスキューの高木です。
このコラムではスピーチを控えた皆様や
人前で話す皆様向けの記事を掲載しています。

――――――――――――

きょうのテーマは「話を短くするヒント」です

もうすぐ夏の高校野球のシーズンです。

私はラジオ局のアナウンサー時代に10年以上、
水戸市民球場での高校野球実況を担当しました。

スポーツ実況は日々の訓練が欠かせません。

私はカーラジオでプロ野球実況を聞いて
「耳で覚える」、「声に出してまねる」
という練習を重ねていました。

その時に「これぞ職人技!」という実況を
聞くことができたのです。

まずはプレーの状況を説明しましょう。
――――――――――――――――――

< 状況 >

・状況:
 ランナー(走者)3塁。得点チャンス。

・打者(バッター):
 「スクイズ」(点を入れるためのバント)選択。

・打球:
 ピッチャー前に転がる。

・3塁走者:ホームに向かう。

・投手(状況):
 素早く本塁(ホーム)へ送球する必要。
 3塁走者の阻止をしないと相手の得点。

・投手(動作):
 打球をグラブで取ると、球の持ち変えで
 コンマ数秒の時間ロス=走者を阻止できない可能性。

・投手(判断):
 「グラブでボールをはたくプレー}
 =「球を本塁へ押し返す動作」を選択。

・ボール:
 本塁の捕手へ送られる。

・捕手(キャッチャー):
 滑り込む3塁ランナーと交錯。
 点が入るかどうかのきわどいプレー…

――――――――――――――――――

プレー状況を長い言葉で説明すると
上記のようになります。

野球のルールがよくわからない、という皆さん、

「点が入るかどうかの場面だ」

とご理解ください。

その場面を普通に実況すれば、
こんな言い回しになります。

――――――――――――――――――

(普通の実況)

バッター、バットを横に寝かせた。スクイズ!
打球はピッチャー前に転がった。

ピッチャー、前に出た、素手で取るか?
ボールを取らずグラブでボールをはたいた。
はたかれたボールはキャッチャーへ。

ランナー、ホームに向かう、クロスプレー、
判定は…セーフ、ホームイン! 同点!

――――――――――――――――――

流れのあるプレーなので、これもまた
実況パターンとしては大いにあり、です。

ただどうしても言い回しは長くなります。

ですが私が聞いた「神実況」はなんと2秒で
このプレーを言い切ったのです。

そのアナウンサーはこう言い切りました。

――――――――――――――――――

(神実況)

「スクイズ! ピッチャー前、
 グラブトス、バックホーム!

 ランナーセーフ、同点!」

――――――――――――――――――

これだけでした。

たったの2秒ですべてを言い切ったのです。

非常に長い説明を
「最も短い用語」に言いかえたのです。

これぞ職人技!という「神実況」でした。

解説しましょう

――――――――――――――――――

(解説)

・打者(バッター)+ 打球
 =プレー説明と球の位置のみ説明。

 ⇒ 「スクイズ」「ピッチャー前」

・「グラブでボールをはたくプレー}
  =「球を本塁へ押し返す動作」

 ⇒ 「グラブトス」の5文字に圧縮。

・ボール:
 「本塁の捕手へ送られる。…」

 ⇒ 「バックホーム」の6文字に変換!

 「バックホーム」というと、
 イチロー選手のレーザービーム送球のような
 「外野からの遠投」をイメージしがちですが
 「捕手への返球」ならばどこから投げても
 「バックホーム」となります。

 この場面は
 「ピッチャーがグラブではたく
  約1m先へのアンダーハンドトス」ですが

 「グラブトス・バックホーム」で通じるわけです。

――――――――――――――――――

私は思わず

「この実況アナはすごい!」

と、ラジオの前でうなりました。

その方の名前は確認できなかったのですが
言葉の「圧縮力」はまさに神業。

今でも鮮明な記憶として残っています。

――――――――――――――――――

まとめです。

言葉の「圧縮・凝縮」は、
時間を短縮し、聞き手に好印象を与えます。

聞きやすさ、わかりやすさ、だけでなく
「聡明な印象」をも与えるのです。

言葉を凝縮・圧縮するには、
プロの技をまねるのが最も効果的。

意識してニュースや実況を見聞きしたり、
新聞等を読むことが実は近道です。

マスコミ現場ではプロたちが苦労して
「圧縮した言葉」を世に出しているからです。

プロのワザを使わない手はないですよね。

皆さんもぜひご参考になさってください。
皆様のご参考になれば幸いです。

(講師:高木圭二郎)

[内容更新:2019年7月4日]

この記事を書いた人

高木 圭二郎(たかぎ けいじろう) 

研修講師・フリーアナウンサー トークレスキューNEXT代表
(元 茨城放送アナウンサー兼 ディレクター・報道記者)

講師プロフィール詳細はこちら
https://talkrescue.jp/instructor/profile

講師活動の実施実績はこちら。
https://talkrescue.jp/instructor/achievements

【 お問合せ・お申込み 】
スピーチ講座トークレスキューの
お問合せ・お申し込みはこちら。
水戸会場でプライベートレッスンを展開中。
⇒お問合せフォームが開きます。

【水戸会場プライベートレッスン】
水戸会場プライベートレッスン
詳細はこちら ⇒
別ページが開きます。

© 高木圭二郎 2024 All Rights Reserved.
当サイトの全コンテンツの無断転載を禁じます。
無許可の転載、複製、転用等は法律により罰せられます。