講師の高木です。元ラジオ局アナ・報道記者の経験から、
全国各地の自治体・公的機関で「危機管理・マスコミ対応研修」を行っています。

今回のテーマは「タイレノール事件の考察」

(※画像はイメージです。実物とは別です。)
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私の「危機管理・マスコミ対応研修」の「第1章」では必ず、
「リスクマネジメント概論」の項目を用意しています。

時々「謝罪会見の部分だけ教えて欲しい」「緊急時の報道対応だけを知りたい」
などのご要望もありますが、そもそも緊急記者会見や謝罪会見は
「危機管理広報」という内容の一部。

よって「危機管理・リスクマネジメント」の概論や基礎項目をしっかりと
理解していただきたい」というのが私の研修におけるの考え方なのです。

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ここから本題です。

「危機管理」や「リスクマネジメント」の講師や専門家の方は数多くいますが、
危機管理関連の教本や講義等で、必ずと言っていいほど紹介されるのが、
米国ジョンソン・エンド・ジョンソン社の「タイレノール事件」です。

「タイレノール」は欧米で大変ポピュラーな解熱鎮痛剤。
このタイレノール事件の概要は以下の内容です。

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■タイレノール事件 概要

・1982年9月アメリカ・シカゴ近郊で12歳の少女が
 解熱鎮痛剤タイレノール服用後、死亡。

・周辺のタイレノール服用後の死者は7人に。

・メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンの経営陣は
「8人目の死者は出さない」と商品回収を実施。

・商品回収策としてテレビCM、専用フリーダイヤル、
 新聞一面広告などを活用。タイレノールの回収・注意を呼びかける

・この時の回収経費=約1億ドル(=当時の日本円で約277 億円)。
 約3,100万本のタイレノールを回収。

というものです。

このタイレノール事件は、現在、毒物混入の事件だったとの見方が強まっており、
この時の人命優先の初動対応は危機管理のお手本の一つとされています。

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それにしても1つのメーカーが、1億ドルをかけて商品回収、というのは
そう簡単にできるものではありません。

なぜ有事の際に即座に意思決定が出来たか?
そこにはジョンソンエンドジョンソン社の「クレド」が影響していたとされています。

「クレド」(Our Credo)という言葉は、日本でも徐々に浸透しつつありいますが、
「経営哲学」や「理念」「社訓」などと訳されることも多い用語です。

ジョンソンエンドジョンソン社のクレドを要約すると、以下の内容となります。

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■ジョンソンエンドジョンソン クレド要約

第一の責任 全顧客への責任
第二の責任 全社員への責任
第三の責任 地域社会への責任
第四の責任 株主への責任

企業公式情報はこちら

ジョンソン・エンド・ジョンソン 我が信条(Our Credo)
https://www.jnj.co.jp/jnj-group/our-credo

顧客最優先の姿勢が第一に挙げられ、株主への利益還元は後回し、との姿勢が
このクレドから理解できます。

よって、多額の経費をかけてでもユーザーの命を守る、という判断に至ったとされています。

結果としてこの危機管理の判断は、経営面の危機をも救うこととなりました。
タイレノール事件後、売上が大きく落ち込みますが、そのわずか2か月後には、
事件前の80%までに数値が回復した、とも言われています。

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この事例から私は、以下の教訓をお伝えしています。

「不祥事・トラブル・事件・事故の際には、誰もが隠し事をしたくなるもの。」

「しかし、自分たちに不利なことも正直に伝え、情報発信することが、
 結果として組織のダメージを最小限にすることが多い。」

という内容です。

現代社会では、組織の隠し事はどこからか情報が漏れてしまうもの。
ならば不都合なことも正々堂々と情報発信をして、信頼回復につなげる方が良い、
というのが危機管理の基本的な考え方となります。

今回紹介したタイレノール事件に関しては様々な文献があり、危機管理の重要事例として
多くの書物等で紹介されています。ぜひ皆様もお調べいただければと思います。

以上、皆様のご参考になれば幸いです。
(講師:高木圭二郎)


この記事を書いた人

高木 圭二郎(たかぎ けいじろう) 

研修講師・フリーアナウンサー トークレスキューNEXT代表
(元 茨城放送アナウンサー兼 ディレクター・報道記者)

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